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日本トレーナー界のパイオニア 岩﨑由純さん がスポーツトレーナーとして備えてきたこととは?

日本トレーナー界のパイオニアとして約40年間スポーツ現場の第一線で活躍されてきた岩﨑由純さん。そんな岩﨑さんのインタビューを実施しました。
第1弾は「40年間トレーナーとして現場で1番大変だったこと、心に残っていること」について伺いました。

「不測の事態にどれだけ備えられるかが大切」

ーー早速ですが、岩﨑さんが40年間トレーナーとして活動されてきて、現場で1番大変だったこと若しくは、心に残っていることはどんなことでしたか??

「大事な選手の指が捥げたときは焦りましたね。」

ーー指が捥げるってあるんですね。。どんなシチュエーションだったんでしょうか?

「バレーボールの練習中に突き指したかなと思っていたら指が捥げていました。バレーボールでは、試合中に前十字靭帯の断裂などの対応は何度も経験してますし、ジャンプをして着地の際にボールの上に乗っかって転んでしまい脳震盪を起こしたこともありましたので、割とたくさん経験したんですけどやっぱり身体の何かが取れるということは、あまりないことですね。

私がトレーナーとして活動しているときに死亡してしまった選手は幸いなことにありませんでした。心肺蘇生に関しては、講演会に出席しているときに心肺蘇生をしたケースはありました。たまたま休憩中に通りがかったタイミングでの出来事でした。

トレーナーとして活動する際には、ある程度いろいろなことを想定しながら活動していますが、想定を超える出来事が起きた時には『なぜこのようなことが起きてしまったのか』と気持ち的には少々動揺することがあります。

とは言いつつも、一番は怪我をしてしまった選手の方が一番ショックを受けていると思うので、私は可能な限り冷静を装って病院に連れて行き、処置をしてもらいます。

ですから、想定を超える出来事が起きた時には、いかにして気持ちを整え、冷静な判断ができるかがトレーナーとしては大事なのかなと思います。」

ーーちなみになぜ指が捥げてしまったのでしょうか?

「ボールが指に当たるタイミングや角度、方向、力の入れ方などがずれてしまったんでしょうね。突き指や骨折はよくあることなのですが、分離というのは本当にあまりみないことなんですね。」


ーーそのような状況の中、応急処置の際に現場のトレーナーとして気を付けていたことはどんなことでしょうか?

「基本的にはどんな事態が発生しても正しく対処することがスポーツトレーナーとしてのお仕事ですので、物の準備も大事ですが、心の準備も大事ですよね。その時に支える側のトレーナーがパニックになってしまったら冷静な判断をすることができないので。ちゃんとした心の準備ができているかどうかが一番大切です。

我々がトレーナーとして現場にはいる時には、救急連絡先の確保が一番重要です。バレーボール種目の場合は、全国各地で試合があるので、それぞれの会場でどこに連絡をするのがベストなのかを事前に準備しますし、どこにAEDが設置されているのか、どこに行けば担架を借りれるか、怪我をしたときにどのようなルートで搬送するのかという様に、いざという時に備え、どんなときでも準備できているようにしています。」

ーーそうなんですね。いざという時の準備・確認が大切だということはよくわかりました。そんな中で、具体的にどのようなことを意識されていますか?

「不測の事態が起きた時、周囲の人もパニックしてしまうことが多いと思います。ある野球の試合での出来事ですが、試合中にバッターが打ったボールがピッチャーの胸に強く当たり、その場に倒れてしまいました。周りの人たちは何が起こったかわからない状況だったと思います。心臓に対してボールが当たるという強い衝撃が加わったことによって、心臓震盪を起こし、心肺停止状態になってしまいました。あまり知られていないのですが、AEDには録音機能がついていて、周囲の音が録音されます。ボールが胸に当たり、周りの仲間たちが倒れている選手の名前を叫んでいる声がずっと録音されていて、場がパニックになっていたことがわかります。

ただ、AEDを使用する際には周囲の人の感電リスクもあるので、誰かが冷静に『離れてください』と、場のコントロールが必要になります。AEDを使う人がパニック状態だと非常に危険なので、もしトレーナーの方が現場にいて、そのような場面に遭遇した時は、自分自身の心をコントロールすることと、周りのみなさんのパニックを鎮め、正しい行動をするための指示の声掛けができることという『場のコントロール』が大事になってきますね。

なので、いざという時に平常心を保つために、不測の事態を常にイメージし、どうのように動くのかをシミュレーションして、何度もイメージトレーニングすることが大切です。それが、正確でスピーディーな処置や、場をコントロールする冷静さに繋がると思います。」

(この続きは、第2弾に掲載いたします。)
(※画像は過去のイベントで撮影した素材です。)

プロフィール

岩﨑 由純(いわさき よしずみ)

NECレッドロケッツ現コンディショニングアドバイザー。アスレティックトレーナーとして、数々のスポーツ現場で活躍。1992年バルセロナオリンピックではバレーボール選手のサポートを行う。

アメリカ留学中に、ペップトークの迫力・想い・魅力を体感し、現在では、スポーツ・教育・ビジネスの世界に普及するため全国で講演会を実施中。

・日本コアコンディショニング協会 会長​
・トレーナーズスクエア株式会社 代表取締役社長​
・日本ペップトーク普及協会 代表理事​
・日本オリンピック委員会 強化スタッフ​
・日本アスレティック・トレーナーズ機構 前副会長​
・NSCAジャパン 元理事​​

資格・経歴

・全米アスレティックトレーナーズ協会 公認アスレティックトレーナー​
・日本体育協会公認アスレティックトレーナー​​

・スポーツ・フェスティバル(コロラド・スプリングス)(1983年)​
・ロサンゼルスオリンピック(メーカー派遣)(1984年)​
・オリンピック・センター(コロラド・スプリングス)(1984 – 1985年)​
・フィラデルフィア・イーグルス夏合宿参加(1985年夏)​
・NECバレーボール部 アスレティック・トレーナー(1986年 – )​
・全日本ジュニア・バレーボールチーム帯同トレーナー(1989 – 1990年)​
・バルセロナオリンピックバレーボール全日本女子帯同トレーナー(1991 – 1992年)

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